歩いたり、寝転んだり | セピア色の心電図

歩いたり、寝転んだり

「彼女の姿を見ていると、僕の気持ちが翻弄されているのがわかるよ」


斎藤はそういうと、2本目の煙草に火をつけた。手が悴んでいて、上手く火がつかない。数回目の指の動きで、ようやく胸いっぱいに煙を吸い込む。

彼は目を瞑って、静かに話し出す。

「僕はずっと彼女のそばにいるし、これからもそれは変わらない」

僕は細かく頷いて、話を促す。

「ただ、僕が彼女をしあわせにするのではない。そう分かってしまった様な気がするんだ」

「考えすぎじゃないのか」

僕は間髪いれず、そう答えた。斎藤の悪い癖だ。結論を急ぐ割に、彼の気持ちは全く決まっていない。その後の話の長さでよくわかるのだ。

「うん」

「僕は君が彼女を深く愛している事を、知っているよ」

「うん」

「君が今言った彼女のしあわせは、君によってしか与えられないものだと思う」

「うん」

「・・・うん」


僕も煙草に火をつける。斎藤は僕の一連の動作を見守っている。

なんなんだろう。彼はどうしたいのだろう。僕はどうすればいいのだろう。・・・どうでもいい・・・はなしだろう。

(続くかも)